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外資系マネージャーの独り言

日本で外資系企業のソフトウェアエンジニアマネージャーをやってる人のブログです

RSU(Restricted Stock Unit) 傾向と対策

会社の役員や従業員が所属する会社から自社株式を購入できる権利としてのストックオプションはよく知られています。

成功したベンチャー企業では、この権利で一般社員でも大きな資産を手に入れられる可能性がありますが、一部の外資系企業ではRestricted Stock Unit(RSU=制限付き株)という形で自社株を社員に与えていることがあり、現職では著者もこのRSUを賞与に近い形で受け取っています。

RSUの仕組みは独特で、特定のタイミング(入社時、プロモーション時、など)で社員に対して一定数の株が割り当てられ(Grant)ます。RSUの「制限」はGrantのタイミングで定義されますが、一般的なのは2-4年に渡ってGrantされた自社株が小出しで社員のものになる(Vest)されるパターンだと思います。Grantされたタイミングでは,株を一定の条件(会社の在籍し続けている)に基づいて段階的にもらえる約束を取り付けただけの状態で、Vestされることで初めて自分のものになる、という訳です。

例えばですが、入社時に100株が4年に渡ってGrantされるケースを考えると、

  • 1年目:5株
  • 2年目:15株
  • 3年目:40株
  • 4年目:40株

...といった形で、最初の1,2年はRSUのメリットは少なく、長く(2,3年以上)在籍することによってより多くの株を受け取ることができる...という仕組みによって、優秀な社員がさっさと他の会社に移ることを思いとどまらせる効果が得られると同時に、会社の株価が上がるように各社員が努力するモチベーションになる、ということになります。前者については金の手錠(Golden Handcuffs)とも呼ばれていますが、会社が順調に成長を続けていて、株価が上昇局面にある限りにおいてRSUは最大限の効果を発揮します。

会社によってポリシーは異なるのでしょうが、会社にとってより価値が高いと思われる社員(パフォーマンスが一定レベル以上)や、プロモーションを受けた社員には、評価の決定(ここで年俸が決まる)と同時に新たなRSUがGrantされることもあります。これにより、High Performerな社員のモチベーションと忠誠心を維持し、さらなるパフォーマンスの向上を期待することができる、ということになります。

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タイトルを「傾向と対策」としたからにはRSU関連で有益なTipsを書きたいところですが、RSUはVestされるまで手出しできませんし、株価に直接影響を与えるような仕事はそうそうできるものではないので、もらったRSUに関しては特にできることはありません。強いていうならば、入社時にRSUをくれる会社からオファーが出たとした時に、年俸アップの要求をする代わりに「会社にとってより長期的に大きなインパクトを与えたい」とかなんとか言って割り振られるRSUを増やしてもらえないかお願いしてみる…なんてのはありかもしれません。

なお、日本に住んでいる社員が外資系企業でRSUをもらった場合、やや厄介なのが確定申告が必要になることでしょうか。源泉徴収される会社からの給与とは別に、1年のうちの特定のタイミングで株を譲渡されることになるので、RSUがVestされた翌年には確定申告が必須となります。慣れてしまえばどうってことはないですが、住宅ローンとか医療費の控除で確定申告の経験のないサラリーマンにとってはやや大変かもしれません。

確定申告の大まかなやり方としては、株がVestされたことを証明する書類(日付と株式の時価が書かれている)が証券会社から入手できるはずなので、これに加えてVestされた日付の為替のレートを証明できる資料を(例えばこのへんから探せる)を印刷し、これらの書類を添えてVestされた株式の日本円での時価を収入として申告する…ということになります。VestされたRSUは普通の所得として計上されるので、所得税率はその他の収入とあわせたものが適用されます。

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VestされたRSUについては、購入した株と同じように保持し続けるも売却するのも社員の自由ですが、売却時の株価がVestされた時より上がっていた場合(RSUを採用している会社は多くの場合該当すると思われます)、改めて確定申告で譲渡益を申告する必要があります。実はこのプロセスについては未経験なのですが、株式などの譲渡益(キャピタルゲイン)は一律で20%の税率がかかるので(NISAが始まる前までは10%だったはず)、ここでもまた税金を払うことになります。

RSUの売却タイミングはキャッシュの必要性、株価・会社の展望、為替情勢、それにRSU以外の投資活動との兼ね合いで判断する必要がありますが、個人の状態や考え方によって判断方法は違いそうなので、多くは書きません。

なお、日本では前年度に一定額以上(現時点では15万円)の所得税を払った人から予定納税という形で年に2回の所得税の支払い(前払い)が義務付けられています。「昨年はこのくらい儲かったんだから、今年もこのくらい所得があるだろうから税金も払っておいてネ」という訳で、まとまったRSUをもらった翌年は突然税務署から所得税の請求が来るので驚かないようにしましょう。なお、当然ですがここで前払い(?)した所得税は確定申告後に支払う所得税と合算されるので、トータルで支払う所得税が増えることはありません。また、余計に所得税を払う必要がない可能性がある場合には予定課税について異議を唱えられたはずなので、しっかりと申告したほうがよいでしょう。

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運が良ければサラリーマンがでありながらもそれなりにまとまった金融資産を短期的に手にできる可能性のあるRSUなので、もしもらえるものならできるだけ多くもらい、会社に貢献して長期的な資産形成を有利にすすめるとよいでしょう。