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外資系マネージャーの独り言

日本で外資系企業のソフトウェアエンジニアマネージャーをやってる人のブログです

ソフトウェアエンジニアの税負担と生活コストの国際比較

お金のこと 海外生活

ある程度自由に国をまたいで働けるソフトウェア開発の仕事をしているので、家族持ちの一般的な稼ぎのソフトウェア開発者はどこの国に住むと税負担や生活費の面で考えて有利なのか‥ということをざっくりとしたアプローチから見てみます。

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ここでいう税負担とは、所得に対して直接的にかかってくる税金及び社会保障のコストということにして、例えば日本ではいわゆる「所得税・住民税」」に加えて「厚生年金」や「健康保険」をあわせたものを比較対象とします。ビザの種別、子供の数、住宅ローンの有無、居住地、401K/DCの有無&活用...といったパラメーターで負担の度合いは大きく変わってくるので、単純に比較してもそこまで精度の高いデータにはならない恐れがありますが、ざっくりの肌感覚として国によってどのくらい「デフォルト」の税負担が課せられているのかを調べることを目的としています。

また、生活費についてはNubeoのCost of Livingを参考にして、生活コストに最も大きな影響を与えるであろう家賃(Rent Prices)と、家賃を含んだ生活コスト(Consumer Prices Including Rent)に注目し、東京を100%とした時の比較で考えます。

多分に不正確な情報を含み得る記事なので、あくまで個人が興味本位で調べた参考値として考えてください(より高精度の計算方法の提案があればコメントお願いします)。

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で、早速ですが、まとめた結果がこちら。ドン。

国名 税負担 家賃 生活費 収入 可処分所得比率
イギリス (LHR) 35% 170% 114% 156% 139%
アメリカ (SFO) 30% 200% 164% 180% 150%
オーストラリア (SYD) 28% 159% 115% 140% 138%
日本 (HND) 27% 100% 100% 100% 100%

ここでいう「可処分所得比率」とは、日本での収入を基準とした時に各国での収入から税負担を引いた割合です。簡単に言うと現地での可処分所得の日本との比較で、この数値が高くて生活費が低い国ほど「生活に余裕が生まれやすい」ということになります。

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日本の場合。

税金計算機 | 所得税・住民税簡易計算機

厚生年金保険料の計算 - 高精度計算サイト

ソフトウェアエンジニアの給与の相場は会社によって大きく違う気がしますが、開発者としてある程度の経験・実績があり、かつコミュニケーション能力が一定以上あって、英語圏のチームともバリバリ働ける…という人材であれば、一般的な外資系企業だと年収800-1,000万くらいが相場なのかなと思います(ちょっと適当)。

仮に900万を年収として、上の税金計算機を使って所得税・復興特別税、住民税を計算すると、約150万円なので、税負担は17%となります。このほかに、厚生年金(80万円)と健康保険(10万円)を加算すると、27%が所得にかかってくる税負担です。

生活コストについては日本を基準とするので全て100%となります。英語圏の大都市圏との比較でいうと、家賃が圧倒的に安いのが目を引きます。

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アメリカの場合。

California Income Tax Calculator | SmartAsset.com

仮に150K USD/year(今のレートだと1,700万くらい。シリコンバレーでは一般的な給与)をカリフォルニア州で稼いでいる場合、Federal(国の所得税), Fica(厚生年金保険), State(州の所得税)がそれぞれかかってきて46K USDくらいが税金になる計算。

ざっくり言って、税率は30%。アメリカの場合、日本の健康保険に類するものは会社経由か個人で加入したりするのが一般的みたいだけど、仮にその保険にお金がかかるとしたら可処分所得/収入の比率はさらに低下する。…と同時に、アメリカの場合は源泉徴収ではなくて個人がTax ReportしてTax Returnすることになっているので、あれこれ制度をうまく使えば節税しやすい土壌があるのも確か。

家賃は東京比で驚異の200%。さすがは「地獄のシリコンバレー」(笑)。もちろん家のサイズ等を含めると単純比較はできませんが、そこそこ便が良くて環境のよいエリアの2BEDか3BEDの物件だと最低でも3000ドル/月くらいするようです。生活費も全面的に上がりますが、収入も上がっている分生活は成り立つだろうという推測はできます。

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オーストラリアの場合。

Calculators and tools_Host | Australian Taxation Office

これまたざっくりだけど、仮に150K AUD/year(今のレートだと1,300万くらい。シドニーでそこそこのソフトウェアエンジニア職だったら稼げてそうな金額)を収入とすると、所得にかかる税金は43K AUDくらい。

税率は28%で日本とどっこいどっこい。これまた、豊富なTax Return制度や控除の仕組みがあるので、家族構成やその他の条件によってはここからさらに税率が下がる可能性は高い。ただし、アメリカと同様に健康保険が結構高額なので(全Residentに提供されるMedicareはカバレージがよくないので保険加入が一般的)、そういったコストは多めにかかる。

オーストラリアの大都市圏も家の値段が高騰していて、東京比で159%。ただしNumbeo的統計だと生活コストは東京比で115%増なので、収入アップが見込める場合は理論上東京に比べて余裕のある生活となる。

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イギリスの場合

#1 UK Income Tax Calculator 2016 & Salary Calculator since 1998! : gross salary of £100000 (2016) 2016 / 2017 UK Tax Calculator

仮に100K GBP/year(約1,400万。ロンドンのソフトウェアエンジニア職のイメージ)を収入とすると、所得にかかる税金は35K GBPくらい。

税率は35%で、英語圏の先進国の中ではかなり高い印象だけど、なにせ「揺りかごから墓場まで」の元祖なので、高い税負担に比して社会福祉はそれなりに充実している…と期待したいところだけど、国民全員に提供される健康保険システム(NHS)はあんまり機能していないと聞くので、一定レベルのQOLを求め始めると高コストな国だなという印象。

ロンドンの不動産は過去10年以上ハイペースで高騰し続けていたので、東京比で170%の家賃は予想通り。それでも、オーストラリア同様住居コストを含めた生活費は東京都大差がないので、これまた大きな収入アップを見込めれば十分以上に暮らせるだろうということになりそう。

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...とかなんとか考えてみると今の日本の超累進課税は、そこそこ稼いでいるサラリーマンレベルだと、(少なくとも初期設定においては)他の英語圏の国と同等か、ややマイルドな税率なのだということが分かると思います。これは、自動的に控除される仕組みがあったり、健康保険が割としっかりしていたりしていて、源泉徴収を通じてサラリーマンからは穏便な金額を確実に取るという国の方針があるのかもしれません。

前職で日本で一緒に働いていたアメリカ人が、アメリカに帰って似たようなポジションで仕事に就いて数年したら「日本の給料の3倍になった」と聞いて「マジかっ!」と思った記憶がありますが、当時勤めていた日本企業の給与は国内の一般的なサラリーマンの平均よりちょっと高いくらいだったので、世界的に見たソフトウェアエンジニアの給与レベルと、税金や保険や生活コストの高さを考えるとそんなものだったんだろうなぁと思ったりもします。

東京の不動産が国際比較(他のアジア圏の国と比べても)で考えると安いというのは前々から感じていましたが、実際にこうして比較してみると圧倒的に安いですね。とはいえ、家のサイズ感や(もし購入する場合は)リセールバリュー、それに住宅に関する寿命の考え方も含めて計算すると、日本の家賃や不動産が低いのにはそれなりの理由があありそうですね。

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いずれまた日本の外に再び出て行くだろう…と思いながらも著者は日本に長居し続けているわけですが、なんだかんだ言って今の日本の生活に大きな不満がないことと、仕事の面で日本にいることのメリットが(現時点では)あること、それに加えて税制上でも条件が有利(あるいは同等)で、生活利便性が高い割に生活コストも低い…といった理由付けがあることが分かりました。

とはいえ、長い目でキャリアや子供の教育、それに老後のことを考えたりすると、動ける自由がある時に家族で動くことの経験値を上げてみるとか、変化を通じて挑戦を続けるとか、いろんな可能性がありそうなので、「どこでも生きていける」をキーワードに模索し続けていこうと思っています。