外資系マネージャーの独り言

日本で外資系企業のソフトウェアエンジニアマネージャーをやってる人のブログです

ソフトウェアエンジニアのキャリア階段

大手のIT企業(FANGやMicrosoft)ではソフトウェアエンジニアの職位の定義がはっきりとしていて、上位の職位のエンジニアになればなるほど会社のビジネスに対する大きな影響力が求められます。

 一般的なのは4段階に分かれた職位で、例えばGoogleでいくと

  • T3 (Engineer II)
  • T4 (Engineer III)
  • T5 (Senior Engineer)
  • T6 (Staff Engineer)

といった区別になっていたりします(エンジニアの職位名は会社によって異なる)。

T3はソフトウェアエンジニアのエントリーポイントで、例えばNew Graduateや経験の浅いエンジニアはこの職位。与えられた仕事を周りのサポートを受けながら一通りこなせます、というポジション。

T4は与えられた仕事をサポートなしに自力でこなせます、という職位。ソフトウェア開発の直接的なアウトプットをもっとも多く求められるポジションなので、おそらくどこの会社でもこのレベルのソフトウェアエンジニアが一番多いんじゃないかな。

T5は自力で与えられた仕事をこなせるだけじゃなくて、自分のチームの技術的な方向性を決めたり、ちょっと大きめのプロジェクトをリードしたり、ソフトウェア開発のプロセスとチームのアウトプットに対する貢献が期待されるポジション。

最後のT6は(原則として)エンジニアとして最上位の職位で、単純にコードがきれい&速く動くとか、知識が豊富とか、そういうこと以上にチームをまたいだプロジェクトで大きな影響力を与えた実績や、対外的な知名度や実績が期待されるポジション。ここまで到達できるエンジニアは稀。

T6の上にも、Seniorホニャララとか、Distinguishedホニャララとかいったエンジニアのポジションはありえるけど、これはもう常人が到達できるレベルじゃないし大きな会社でも数多くいないポジションなので無視。

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募集をかける際の区別でいくと、T3はトレーニングやコーチングを通じて一人前になってもらいたいジュニアな候補者。T4はポジションで要求されるスキルや経験を一定レベルで持っていて、すぐにチームに貢献するできそうな候補者。T5はチームが扱っているシステム・技術に精通していて何らかの実績を持っているシニアな候補者で、Principleはどこか別の会社で大きな成功を収めている著名なエンジニアを引っ張ってくるようなイメージ…ってなところでしょうか。

プロモーションに関して言うと、T3は平均レベルのエンジニアであれば1,2年くらいチームの仕事を問題なくこなせるレベルのアウトプットを出すことでT4になって(逆に、何年もT3のままで働き続けるのは好ましくないとされるのが一般的)、T4として大きな成果を残し続けてチーム内でも周りのチームからも評価を得られるレベルになるとT5が見えてくる感じ。T6から上は一般的なプロモーションでなれるものではないので何とも言えないけど、誰もが認める実力と実績でもって多大な貢献をするとなれるのかもしれません(適当)。

お仕事の内容でいうと、T3は「Xの実装を担当します」、T4は「Xの機能の追加を自力で提案してデザイン&実装します」、T5は「複雑なXの機能のデザインと実装を提案して、必要に応じて実装にも絡む」、T6以上は「大きくて複雑なXの機能のデザインを提唱して、チーム/会社全体の技術的ディレクションに責任を持つ」…というような感覚でしょうか。技術で食ってるエンジニアとは言っても、純粋にコーディングが上手といったこと以上に、技術や知識やベストプラクティスを他のエンジニアに伝搬できたり(トレーナーとして、あるいはコードレビューを通じて)、他のチームとの連携で大きな影響力を示してプロジェクトの成功に導いたり…といった要素が重要になります。このあたりは日本の会社のエンジニアが「包丁一本さらしに巻いて♩」的な世界観で純粋な職人的技量を重視するところと大きな違いと言えそうです。

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で、例えばこんな記事を読むと、それぞれの職位でのサラリーの違いが見えてきます。

blog.step.com

簡単に言うと、どのポジションでもベースの年収の中央値は$100K(1,000万円強)くらいあって、T5/T6レベルになるとベースだけでも$200K(2,000万円強)に近づくけど、職位が上がるにつれてボーナス/RSUが占める量が増えてくる…ということが言えます。もちろんこれはアメリカ本国のサラリーで、日本のサラリーはこれに比べると1割か2割くらい減る印象でしょうか。物価・家賃の高いベイエリアならまだしも、今や物価の安い先進国と言える日本でこのレベルの給料をもらえると、生活は確実に楽だと思います。

エンジニアのキャリアとして考えた時、今のFANGレベルだとT4レベルで働き続けても十分な待遇&面白い仕事ができることが多そうですが、純粋にエンジニアとしての成功を目指すのであれば、強い意志と技術力でT5以上を目指すのが正攻法でしょう。