外資系マネージャーの独り言

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RSUの使い道

さて、会社からもらったRSUですが、どうやって使ったものかねと悩むこともあるかもしれません。

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手っ取り早く全てを現金化してパーっと使っちゃうのもアリですし、そのまま株式として所有し続けることも可能。あるいは、資産運用のポートフォリオを最適化する発想で任意の分量を売却して、他の投資先に分散運用したり、キャッシュにして外貨預金として寝かせておくのも可能。一言で言ってしまうと、その人次第。

要するに、一旦VestされたRSUは「自分の資産ポートフォリオに突然組み込まれた、馬鹿にできない数量の個別株」と同じなのですね。

GrantされたRSUの金額は人それぞれでしょうが、RSUがある程度まとまった分量でもらえる年数を会社で過ごすと、日本円にして累積で数百万〜数千万円単位のRSUを獲得している可能性があると思います。もちろん、Vestに伴う課税で結構な金額の税金を払うことになるので、半ば強制的にRSUを売却して税金の支払いにあてる人もいるかもしれません。

もしはっきりしたお金の使い道が決まっていて、タイムリーに手持ちの資金ではまかないきれないような金額のキャッシュを支払う必要があった場合、RSUを活用するのは大いにありでしょう。住宅購入とか、教育資金とか、そういったケースが思い浮かびます。

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では、キャッシュにする必然性がなかった場合には、どうするべきでしょうか?

ここで重要なのが、投資という観点から見たお金の付き合い方なのかなと自分は思います。企業の個別株というのは、投資の世界ではハイリスク・ハイリターンな投資先に分類されます。これは、経済環境という外部ファクターに加えて、企業の浮沈という内部ファクターが株価に反映されるためで、いくら景気が良好だったとしても決算や直接関係なさそうなニュース一つでも株価は大きく動くため、買い時や売り時の判断が難しく、さらには最悪のケース(倒産)では所有している株式の価値がゼロになるリスクもある、ということによります。

投資対象はたくさんありますが、おおまかに分類すると以下のようなものがあります。

  • キャッシュ
  • 株式
  • 債権
  • 不動産
  • 商品

投資の世界ではキャッシュも立派なカテゴリーで、例えば金利の高い国ではまとまったキャッシュを定期預金などに入れておけば安定してインカムゲインを生み続けることができます。より高い金利を得るために行う外貨預金も投資と言えますが、その場合最も強く意識されるべきリスクは為替リスクであり、さらに為替手数料も馬鹿にならないので賢く付き合う必要があります。

株式についても、個々の株式を売買する個別株から、投資のプロにお金を払って資産運用してもらう投資信託といったものまで、様々なものがあります。

いずれの投資対象においても、リスクというものが常に意識されていて、これは原本が減るリスクがどのくらいあるかということです。キャッシュや債権の一部(国債など)は、原本が減るリスクが極めて少ないため、一般的に安全資産に分類されます。逆に、株式や不動産、それに商品(金や穀物など)は相場の値動きによって原本が目減りするリスク(と同時に利益を得るチャンス)があるので、一般的にリスク資産とされます。

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例えば、手持ちの貯金が500万円の、投資経験のないAさんがいたとして、彼が500万円分に相当するRSUを手に入れたとしましょう。そうすると、Aさんの金融資産の半分は安全資産(キャッシュ)で、残りの半分はリスク資産(個別株)ということになります。この時点では、資産の配分は安全資産とリスク資産の半分半分なので、資産のバランスはそこそこ取れていると言えそうです。

しかし、Aさんがさらに追加で500万円相当のRSUを入手したとすると、安全資産とリスク資産が1/2と2/3になり、所有する資産の大部分がリスク資産となっている状況が見えてきます。

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キャッシュと個別株は(ほぼ)両極端に位置する資産なので話が分かりやすいのですが、結局のところ肝心なのは、資産を運用していく個人がどういったポリシーをもって自分の資産と対峙していくかということなのかなと思います。

極端な話、向こう数十年は手持ちのキャッシュや所得で事足りる状況で、かつ自社株の可能性を100%信じていて、自社株を持ち続けることが自分の資産を最大限にしてくれると確信している人は、もらったRSUを全てそのままにするのが正解でしょう。さらに言えば、この作戦で資産の最大化を狙うのであれば手持ちのキャッシュも一定量を除いて全て自社の株式に投入するのが正しい投資行動となります。

逆に、自分が一度入手した資産については一切目減りすることはまかりならんという人は、もらったRSUは即刻売却して安全資産に移し替えるのが正しい投資行動となります。

一般的な人はこの両極端なポリシー・考え方の間に収まると思いますが、投資は選択肢の数も多く、個々人の置かれた状況や人生計画などなど、多面的に考える必要もあるので考えれば考えれば分からなくなるのではないかと思います。そういう時は、できるだけ物事をシンプルに捉えて、自分はどのくらいリスクを取れるのか(取りたいのか)というポイントから決断していくとよいのではないかと自分は思います。

続編はこちら

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