外資系マネージャーの独り言

日本で外資系企業のソフトウェアエンジニアマネージャーをやってる人のブログです

所得税と配偶者控除と児童手当

日本国内で高所得者層からの課税強化と子育て支援を重視した形で手当・税制の見直しの議論が進んでいるようです。

  • 高所得者配偶者控除の適用外とする (2018年から有効)
  • 所得税の給与所得控除額の上限を引き下げ (議論中)
  • 児童手当の所得制限を世帯収入に対して適用 (議論中)
  • 国民年金の第3号被保険者の廃止 (議論中)

おおまかに言って、絶対数が少ないながらも税収に貢献してくれる上位数%の高所得者層により多く課税しますよーという方針が見えます。個人からの税収に関して言えば、4%しかいない年収1,000万円以上の層が所得税の50%相当に貢献しているという統計もあるようですが、この傾向をさらに強めると言うことです。バブル後のデフレ社会の日本では、1,000万円も稼いでいれば質素な生活をしている限り経済的に困ることもなさそうですし、大多数の非・高所得者層から見ても「それだけ稼いでいればいくら税金取られても痛くないよね」と理解を得やすい構図があります。

media.yucasee.jp

また、一家の大黒柱がサラリーマンとして安定収入を得て、奥さんが専業主婦として家庭を守る…という家族モデルが時代遅れとなり、夫婦共働きで子供は保育園等に入れて…というモデルが標準化しつつある中で、時代に即した変化が求められているという側面もあります。「一億総活躍云々」という言い方もあるようですが、現実的に考えてこれからの日本は慢性的な人手不足に悩まされる可能性が高いので、「みんなで働いて、みんなで税金収めてね」と言ったほうがより正確なのだと感じます。さらに、子育て支援という名目で、例えば給与所得控除額の上限引き下げを子育て世帯を対象外にするという議論があったりするようですが、これも労働人口の維持と将来的・長期的な税収の確保という方向性では妥当な議論でしょう。

headlines.yahoo.co.jp

課税額が増える人(一連の変化で課税額が増えるor変わらない人はいても減る人は少ないはず)にとっては打撃ではありますが、国家戦略として見ると財政の健全化や、時代にあった家族・社会モデルの構築を手助けする方向性で話が進んでいるのかなと思います。

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日本国民のうち確定申告者の割合は16%という数字があるので、概ね2,000万人くらいが自分の収入と課税状況について一定レベルで自覚的であるということができるでしょうか。2017年の就業者は6,600万人程度で推移していて、そのうち5,850万人くらいが雇用者なので、仮に雇用者ではない就業者は確定申告していて、非就業者は確定申告していないとすると(現実的にはそんなことはない)、雇用者のうち確定申告しているのは25%に相当する1,250万人…ということになります。現実にはこの数値はもっと低いと思われますが、いずれにしても大多数のサラリーマン層は源泉徴収という形だけで税金を収めており、必然的に「納税者」という意識は希薄なのではないかと予想します。

この戦略・状況を国家の立場から考えると、例えば給与所得控除を多めに設定することでサラリーマンを(やや)優遇すると同時に、源泉徴収といった形で(手間をかけずに)確実に税収を取り立てて「税金見えない化」に大いに成功しているなと感心します(汗)。

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テックカンパニーや経済のグローバル化の速度と変化に、国家という仕組みが2周回遅れくらいでゼイゼイ言いながら走っているように思える今日この頃ですが、せめて国をまたいで自由に動きにくい個人からは取りっぱぐれないように…という国側の切羽つまった声が聞こえてくるような気がします。さてはて。