ほにゃららサイエンティストという職種
テックカンパニー界隈でここ数年で大きく存在感を増しているポジションとして、「ほにゃららサイエンティスト」というのがあります。
例えば、データ解析やその有効活用に特化したData Scientistは、具体的な仕事内容や期待値についてはばらつきがある印象があるものの、かなり定着した感がありますし、一部企業は似たようなポジションをApplied Scientistと呼んでいたりします(あるいは"Applied Data Scientist"、または"Data Analyst")。
一般的に、"Scientist"とか"Researcher"とかいった名前のつくポジションは、企業内の製品の開発に直接関わるというよりも、長期的な視野に基づいて、新しい技術の研究を通じて企業に貢献する印象が強いです。しかし、これらの新しいポジションについて共通しているのは、企業の意思判断に直接的・積極的に関与したり、プロダクション向けのデータを活用するような仕組みを実際に作り上げるプロセスに深く関与するのが大きな違いと言えそうです。
例によって(?)PayScaleでサラリーを見てみると、USでのMedian Salaryは$91Kで、Software Development Engineerの$101Kよりは少し落ちますが概ね良好な待遇ということができそうです。統計学的な手法やデータ解析ツール、それに機械学習といった技術に精通していて、さらにそれをビジネス目線でクリティカルな指標として提供したり…という役割を考えると、純粋なソフトウェア開発スキルよりも、数字とビジネスをつなぎ合わせるセンスや経験のほうが重要なポジションなのかなと思います。
この新し目の「ほにゃららサイエンティスト」のポジションですが、感覚的に言って二種類の人種に別れる気がします。
- Scientist/Analyst気質で、言語でいうとRとかMatlabとかを使っていて、Pythonベースのノートブックを使ってグラフを書き出してプレゼンしてそうな人
- Software Engineerのバックグラウンドがあって、Analyticalなマインドが強くてデータ解析が得意。言語的にはCとかJavaとかPythonが書けますという人
解析対象となりうるデータの増大と、そのデータ活用が企業にとってより大きな課題(あるいはビジネスチャンス)になることが明らかになってきていて、さらに一般的なソフトウェアエンジニアがまだキャッチアップできていない(場合の多い)機械学習周りの技術に精通している人…というのは今後も高い需要が期待できそうです。…というか自分もチームに一人欲しい (笑)!
ただし、冒頭に書いたとおりポジションの定義や期待値が曖昧で、統計学や機械学習の基礎的教養や実践的な経験があまりなかったり、あるいはソフトウェア開発の素養や経験が全然足りていない人でも「なんちゃってサイエンティスト」として働けてしまいそうな風潮を感じるので、このあたりが是正されていくことでより確立したポジションになっていくのかなと思います。
なお、爆発的な勢いで発展＆実用されているディープラーニング周りの技術を巡っては、ソフトウェア開発という仕事そのものが大きく変わるんじゃないかと意見もあります。例えば以下の記事。
これは、AWS等のクラウドの発展によって自前のインフラや専任のチームを持たずにアプリ開発に専念する可能性が生まれた状況に少し似ているのかなと考えています。具体的には、ソフトウェア開発の一部のプロセスが、ミドルウェアやアプリケーションといったコンポーネントをつなぎ合わせてビジネス上の課題を解決するというパラダイムから、データを集めて処理して有効活用するフレームワークを作りあげることでビジネス上の課題を解決する…というパラダイムに移行する、ということなのではないでしょうか。
そんな中、機械学習のフレームワークを作り上げたり、機械学習ベースのシステムをプロダクション環境に投入するスキルや経験を持った"Machine Learning Engineer"というポジションは、「ほにゃららサイエンティスト」からエンジニア部分を切り出して機械学習関連の技術に特化しているという意味で、当面の間はとても需要の多いポジションになるのかなと思っています(なぜならそんな人あんまりいないから)。
