外資系マネージャーの独り言

日本で外資系企業のソフトウェアエンジニアマネージャーをやってる人のブログです

Pay as you perform and grow (誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいエンジニアの給与について教えましょう・続き)

前に書いたエントリーの続き。パフォーマンスと給与の話。

sdm.hatenablog.com

これまでにもらったRSUと給与の推移について考えていたら面白いデータが集まったので、貼っておきましょう。

f:id:jpsdm:20180618001020p:plain

スクリーンショットなので分かりにくいですが、横が時間軸で、"00"が現職での開始年(1年目)で、縦が前職での年収を100とした時の給与(青)ともらったRSUの累計値(赤)。

転職後には給与が上がったのに加えてサインイン・ボーナスもあって給与が伸びて、2年目にプロモーションがあったのでグイっと上がり、4年目にプロモーションと評価による給与アップがあって一気に基本給だけで前職の年収の2倍を超えてきていることが分かります。年度毎の評価による給与アップも継続的に起きてはいるわけですが、プロモーションに伴う給与アップが圧倒的に数値に大きな影響を与えていることがわかります。

赤のラインはややバグってますが、2年目を過ぎたあたりからグングンと急上昇を続けて、3年目あたりで通常の給与額を超えて(ただし、その1年内にもらってる実質的なRSU分としては給与の半分未満)、その先も伸びを見せていることがわかります。当然ながらRSUの評価額は会社の株価に大きく依存するので、3年目以降の伸びについては株価によるものも大きく貢献していると言えます。

sdm.hatenablog.com

前に書いた通り、入社時にもらえるまとまった分量のRSUは3年目と4年目に収穫期を迎えるので、特に株価が上がっている会社の場合は社員から見て大きな収入を得ることができる関係上、少なくとも2年以上は会社にい続けるインセンティブとなるようにできています。それと同時に、良好な評価を受けている限りにおいては入社後も新しいRSUを付与される機会があるため、会社にとって大事な人材(High Performer)にはより長期にわたって会社にい続けるインセンティブを与える効果も期待できる、ということになります。

**

前職の日系企業でエンジニアで働いていた時に強く感じていた疑問は、なんだかんだ言って年功序列スタイルでポジション・給与が決まる体系と、大きな貢献を残した社員に対して分かりやすい形で褒賞(Reward)が与えられない仕組みでした。

例えば会社の行く末に影響を与えうるようなプロジェクトで大きな貢献を残したチームや個人がいたとして、それを分かりやすい形で評価しようとすると「社長賞」とかそういった形のアワードで「おめでとうさん&ごくろうさん」して金一封…とかなるわけですが、このやり方では貢献の度合いを測るのが難しいですし、一過性のものなので恒久的な待遇改善や、より大きな仕事や挑戦に繋げていくといったことができません。特許なんかに関しては出願に伴う報奨金や、使用料の一部を社員に還元するといった仕組みがありますが、これも万能とは言えません。

年功序列スタイルは日本企業に深く埋め込まれた文化なので一気に変えるのは難しいわけですが、例えば20代のスキルとやる気のある若手が自発的に社内システムの自動化を行って業務効率の大幅な改善を実現するというアウトプットと、40/50代のベテランが役職・年の功に安穏として非効率的な業務に対して一切改善をしていなかった(それどころか非効率的な業務を推進していた)というアウトプットがあったとした時に、この特定業務に関して会社に与えたインパクトを考えれば前者の社員のほうがHigh Performerなのは火を見るよりも明らかだと思います。ところが、日本の会社の常識では後者の方が良好な待遇を得ていて、かつ責任があって重要な決断を下す立場にあり、それが是正されることがない…としたら、前者の社員が良い仕事をしようというインセンティブはうまく働かないことになります。

外資系企業ではパフォーマンスに対する評価がバッチリ正当かつフェアに行われている…とまでは言いませんが、少なくともHigh Performerに対してはより多くの給与を与えるとか、プロモーションしてより大きな責任を与えるとか、そういった形でどんどんRewardしていくことで社員に対してより良い仕事をするインセンティブを与えるというフィードバックが機能していることは間違いありません。

biz-journal.jp

最近の例だと、NANDフラッシュの発明と実用化で大きな仕事をした舛岡さんが東芝を相手取って訴えたケースがありますが、これなんかは日系企業の技術者軽視(あるいは個人・小さなチームが大きなインパクトを与えうることを正当に評価する仕組みの不存在)の現実を如実に表しているように思います。

個人的には、様々なラッキーもあって今のところよい待遇を得ることができている現状があったりするわけですが、良好な結果を残したよい仕事に対して正当な評価をするカルチャーがより多くの環境にしっかりと根付いてくれるとよいなと考えています。