外資系マネージャーの独り言

日本で外資系企業のソフトウェアエンジニアマネージャーをやってる人のブログです

成長する管理職:優れたマネジャーはいかに経験から学んでいるのか

管理職になったので、読んでみた。

企業の中間管理職が継続して成長し、リーダーとして成功するにはどういった「学び」が必要なのかということを研究した著者がによる本。学術的な本なので、一般読者層にはちょっと退屈なところあり。

本の注目点は、「成長」で、individual contributorからteam leaderやmanagerあるいはdirectorと、より大きな仕事の責任が任されるポジションで成功するために、どのような「学び」が必要になるのか、ということをケーススタディーや企業へのアンケート等といったデータから解き明かそうとしている。

本書で示されているマネージャーが学びを得るケースは、以下の3つに分類される。

  • 部門横断型の仕事をする経験
  • チームメンバーの育成
  • 変革の参加

...で、individual contributorの時代に一つの分野で強みを出してきた人は、上位のポジションになっても同様の分野で強みを発揮し続ける...みたいな記述があってすごく同感。また、マネージャーのスキルモデルとして、ヒューマンスキル(対人スキル)、テクニカルスキル(ビジネススキル)、コンセプチャルスキル(認知的スキルと戦略スキルに大別される)といったスキルが分類されていて、これらのスキルをさらに実際の仕事で結果に結びつけるための力として、情報分析力、目標共有力、事業実行力といったものに繋げた上で能力開発が論じられている。

より上位のマネージャーとして成功するにあたり、どの力も向上が求められるものの、特に向上が必要となるのは「目標共有力」で、これはマネージャーとして機能し始めた自分としてもとてもよく分かる説明。

ソフトウェア開発の世界でも、チームのメンバーに対して細かく「あれをしろこれをしろ」というよりも、チームとして向かうべき方向性やビジョンを打ち出して、そのゴールをしっかりと共有した上で各々のメンバーがそのゴールに近づく方法を考えたり、実践したり…というスタイルで仕事を進められるのが理想だと常々考えている。

また、「目標指向性」の類型として、「成果志向」と「学習志向」の2パターンから分析が行われているのもなかなか面白い。マネージャーとしての成功は成果志向がどうしても優先されるし、上位のマネージャーになればなるほどその傾向が顕著ながら、学習志向についても一定レベルの向上が求められる...というのが調査結果。マネージャーの「学び」の経験は、過去の経験、目標指向性、それに上司の支援の三つの要素に大きく依存し、特に「過去の経験」に影響を受けるところが大きかった…というのが本書の見解。

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ざっくり言うと、マネージャーとしての成長を促す「学びの経験」は、経験の連鎖とも言えるものによってもたらされるところが大きく、その経験を得るプロセスに影響を与えるのがその人の特性(目標指向性)と上司からのサポート、ということになるらしい。

マネージャー達の経験談で、部下とのコミュニケーショに関して「ロジックではなく腹落ちしてもらうことが大切」ということが強調されているところがとても印象的で、これは自分が社内で受けたマネージャー向けトレーニングでも痛いほど言われた。考え方や仕事へのアプローチの仕方が異なる個々人をチームとして機能させるには、とても繊細で注意深い作業が必要なのだなというのが自分が得たひとつの学び。

そんなわけで、今後ソフトウェア開発チームのマネージャーとして成長していきたいと考えている自分には、なかなか有意義な本だった。