外資系マネージャーの独り言

日本で外資系企業のソフトウェアエンジニアマネージャーをやってる人のブログです

もしアメ=もしアメリカで働くことになったら? (ビザ編)

ソフトウェアエンジニアにとってのシリコンバレーは、メジャーリーグみたいなものなのかもしれません。

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家賃が高い、エンジニアの給料が高い、優秀な人はすぐ他に行ってしまう…、ということでシリコンバレーに本拠地を置く会社でも、世界中の様々な都市に開発拠点を置いてエンジニアリング部門を分散しているところは年々増えていますが、なんだかんだ言ってwell establishedな大手IT企業と小さくても注目度のあるベンチャー企業が狭い(といっても結構広い)地域に集積していて、巨額のお金が動いて新しい技術が生み出されるエネルギーを持っている…という意味において、シリコンバレーに類比できる場所は他にはないでしょう。個人的に、次はアジアのどこかにそのチャンスがあるように感じていますが、それはまた別の話。

で、日本人で働くソフトウェアエンジニア(あるいはマネージャー)がアメリカで働くかもしれないorアメリカで働きたいor働くことになったら…という想定で、あれこれ考えてみます。

アメリカで専門職がフルタイムで働くとなると、まず突破しなければいけないのがビザ。正攻法で考えると、以下のパターンが考えられるでしょうか。

  • L-1ビザ
    • 国際企業間の転勤者のためのビザで、既にアメリカに拠点のある会社(あるいはアメリカが本社)で働いていて、アメリカのオフィスで働く必要が生じた際にL-1ビザが申請できる。マネージャー・エグゼクティブ向けがL-1A(最長7年)で、スペシャリスト向けがL-1B(最長5年)。
  • H-1Bビザ
    • 専門技術者として一時的に就労する人を対象としたビザで、米国の学士またはそれと同等の経歴を持った人を新たに採用する場合に使われることが多い。年間発給上限枠があるので、タイミングによっては発給まで1年以上待つことになる。最長6年。
  • Eビザ
    • 駐在・貿易・投資ビザ。アメリカと通商条約を交わしている国の国民が、その国を本拠地とする企業からビジネス目的で渡米する際に申請できる。マネージャー・エグゼクティブ・スペシャリストであることが求められ、有効期限は最長5年。

このほか、アメリカの大学・大学院を出てF-1ビザからスタートしてH-1Bを狙うとか、研修用とされているJ/H-3ビザを使うとか、グリーンカードの抽選に参加し続けるとか、アメリカ人の奥さん(旦那さん)を見つけるとか、その他多数の手段はありますが、あんまり一般的じゃないので触れません。

歴史的に見ると、アメリカ、カナダ、オーストラリアといった移民国家は多くの移民を受け入れることで労働力を確保し、社会を発展させ、国を成長させてきました。…ところが、21世紀の今ではこれらの国は既に先進国となり、労働力には特に困っておらず、「移民国家」という側面で見るとその他多くの国と変わらないレベルになってきているのかなと思います。

それでも、アメリカを代表するIT企業の創業者達の顔ぶれをみれば分かる通り、移民一世や二世、あるいは教育や技能を携えてアメリカに渡って成功している人たちの力でアメリカという国が大きく前進し続けることに間違いはありません。そういう意味で、優秀でやる気のある人を惹きつけて大きな成功を目指してもらう意味での「移民国家」という仕組みは未だに健在で、逆にもともと移民国家ではなかった国もそれに倣う形で「(国に貢献してくれる)優秀な人はウェルカム」という姿勢を強く打ち出している、というのが今という時代なのかなと思います。日本も高度人材ポイント制なんかやってますし。

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現時点での自分の立場を考えてみると、同じ会社内で動くとなった場合に理想的なのはL-1Aビザでしょうか。L-1ビザは申請時から遡って過去3年のうち1年以上同じ企業で「申請条件を満たす」条件で働いている(L-1Aの場合はマネージメント業務、L-1Bの場合は条件に合致する専門職)ことが求められますが、このあたりはなんとかクリアできそうです。

L-1Aビザの最大のメリットは、ビザを取得して渡米後すぐにグリーンカードの申請に進むことができ、最も優先的に処理してもらえるところでしょうか。H-1BやL-1Bでも会社にスポンサーになってもらってグリーンカードの申請に進むことはできますが、数多くの既存申請と同じカテゴリーでの手続きとなるため、グリーンカードまでの道は険しく、時間がかかることが多いようです。

グリーンカード(アメリカの永住権)のメリットは明白で、雇用主に縛られずに働くことができる自由と、アメリカ国民と同等レベルの社会保障を受けることができます。アメリカを離れていても税金を支払う義務があったり、アメリカを離れてしまうと永住する意思を証明できないと失効してしまったりと、「一回ゲットしたら自由に出入りしてタダで色んな権利を享受できる」というわけではありませんが、外国人としてアメリカに住むとなった場合には計り知れないメリットがあります。

アメリカで働く際の最強のビザはグリーンカードで、多くの一般人は一撃でそこにたどり着くことはできないものの、ビザ双六のステップを踏んでいくことで到達するチャンスがあるよ、というところでしょうか。