外資系マネージャーの独り言

日本で外資系企業のソフトウェアエンジニアマネージャーをやってる人のブログです

これが私の生きる道 - マネージャー立志編

10年以上ソフトウェアエンジニアとして仕事をしてきて、マネージメントの世界に足を踏み入れた理由付けを自分なりに考えてみます。

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日本企業の世界観でいうと、学校を出たばかりの新卒が経験や実績を積んで、中堅どころになって周りの信頼を得るようになり、係長なり課長なりといった形でチームを率いる立場になって管理職の仲間入りをする…というのはある意味自然なキャリア形成なのかなと思います。「亀の甲より年の功」なんて言葉が表すとおり、日本の社会では「年功」というものが重要視されていて、人の上に立つのは方々に顔が効いて様々な経験の得た人物が適任である…ということが広く信じられています。

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この考え方は、組織の構成員の流動性が低く、継続的な成長・拡大を続けていて、周りの環境の変化が比較的緩やかで、「年功」を大切にするカルチャーが根付いている世界観においては有効で、かつ組織の構成員にとっても分かりやすい&平等なのかなと思います。しかし、人の流動性が上がったり(外部の知識や経験にどう価値を見出すかが分かりづらくなる)、組織の拡大が停滞したり(マネージメントのポジションが増えない)、環境の変化が激しかったり(経験の重要性が減る)、年功に重きを置かない人が増える(実力主義!)といったことになってくると、年功システムで組織を運営していくのは難しくなってきます。

ここまでは一般論。

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ソフトウェア開発の現場においてはどうかというと、Googleの人事の人が書いた"Work Rules!"でも触れられているとおり、マネージメントの重要性・必要性はそれなりに認知されていると同時に、(エキサイティングな)ソフトウェアエンジニアに比べると、(Administrative(管理)な)マネージメントは「つまらない」と考える風潮があるのかなとも思います。というよりも、自分もどちらかというとそういう考えの持ち主でした。

職場環境によるとは思いますが、新しい技術を学んで取り入れたり、システムやツールをデザインして、実装して、リリースして…といった形で、ある程度自分の裁量で仕事を進めることができるソフトウェアエンジニアは多いかと思います。これは、技術者にとってやりがいのある環境であると同時に、世界レベルで見ても常に需要があるので待遇がよく、転職する自由度やよりよい環境を求めていく上でも有利なポジションであると感じます。

それに比べると、マネージメントは自身のチームを率いる立場であるとはいえ、個々の技術に深いレベルで触れることもなく、開発に没頭する楽しさもなく、チームを運営していくための事務や、上位のマネージメント層との(場合によっては)政治的なあれこれや、Low Performerなチームメンバーの面倒を見たり、他のチームとの調停といった雑用に追われる印象が強く、特に自由を重んじるソフトウェアエンジニアにとっては魅力的なポジションに映らないのかなと思います。

sdm.hatenablog.com

そんなわけもあって、別の記事で書いたとおり、今時のIT企業ではソフトウェアエンジニアとして長きにわたってキャリアを築くことができるようなパスが存在していて、業界歴の長い50代のエンジニアがヨーダみたいなノリで活躍するというのが普通になってます。もちろん、ヨーダになるにはヨーダ的な実力と経験と実績が伴ってないとダメなので、エンジニアとして高みを目指すのも楽ではない訳ですが。

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で、自分がマネージャーになったワケ。

複数の要因がありますが、そのうちのひとつは「個」のソフトウェアエンジニア(Individual Contributor)としての自分ができることは、今のチームである程度やりきったと感じたことがひとつ。チームでは東京で唯一のメンバーとしてジョインして、プロジェクトをいくつか走らせて新しいツールやシステムの開発に貢献したことでチーム内外での信頼を得ることができたのと同時に、会社や社会にもっと大きなインパクトを与える仕事をするには、自分一人の力では足りない&チームとして取り組まないと達成できない挑戦をしていく必要がある…と壁を感じていました。

前職の時代から、「自分はソフトウェアエンジニアとして特に優秀ではないな」という諦めがあって、特定分野のエキスパートや、純粋にコーディングが上手な人、とにかく凄い人と同じ土俵で勝負するのは避けて、人が思いつかない(正攻法ではない)アプローチを考えたり、ジェネラリストとして色んな技術・側面から考える癖をつけたり、技術力と英語力とプロジェクトマネージメント力の合わせ技で勝負したり…という、やや姑息なテクニックでキャリアを積んできたと思っています。そのままずっとソフトウェアエンジニアとして上を目指し続けるよりも、あるタイミングで転進をせざるを得ないだろうと考えていたところで、チームを引っ張るチャンスを与えられた、というのが偽らざる実感でしょうか。

さらに、英語圏の人間と切った張ったのコミュニケーションができる日本人で、日本の企業でもアメリカの企業でもソフトウェアエンジニアとしてそこそこの経験があり…という自分の特性を考えると、ここに「マネージメント」の能力が加わればより自分のキャリアの特異性がより高まるなという下心もあったように思います。また、ソフトウェアエンジニアが一旦マネージャーになったとしても、またソフトウェアエンジニアに戻ることは十分に可能だから、試しにやってみるのも悪くはなかろう、という考えもあったかもしれません。

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とにかく、「エンジニアとしてもっと面白い仕事ができる」というところは少し諦めて、

  • チームで結果を出すためにどうしたらいいか
  • 自分のキャリアプランを考えた時に有利になりえる選択肢

といったあたりを優先した結果、マネージャーになるという方向性を当時のボスと話し合って、今に至る…というわけです。

今の会社の本体はアメリカにありますが、エンジニア集団という雰囲気を残している会社なので、ほとんどすべてのマネージャーがソフトウェアエンジニアの経験があり、さらに会社の内外で何らかの結果や成果を残していて、特に自分が知っている何人かのマネージャーは「ソフトウェアエンジニアのチームのマネージャーはこうあって欲しい」という理想像を体現しているような人物なので、そういったところも自分の決断にポジティブに作用したように思います。

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ま、そんなわけで自分がマネージメントの世界に足を踏み入れるきっかけを書いてみましたが、立派なマネージャーになるにはまだ道半ばで、苦労しているところが多いので、今後ともあれこれ記事にしていけたらと考えています。